WEB限定 書き下ろし小説

守りたいもの ~レンの気持ち~

3

 そして翌日のお昼。
 広場に集まった三人は、『魔法騎士隊』が何をすればいいのか相談することになった。
「人気者になるためにすることはひとつさ! 歌を歌うんだよ、この僕の美しさをたたえる歌を!」
 まずセドリックが意見を出す。
「却下」
 当然、レンは頭を横に振った。
「では、街中に花を植えよう」
 そう提案したのはもちろんショーン。
「歌よりマシだけど却下」
 レンはこれにも頭を振る。
「二人とも、ふつうに街の人たちの役に立とうって思わないのか?」
「あはははは、実に面白い意見だね!」
 セドリックは想像もしなかった、という顔で笑った。
「で、街の人の役に立つこととは?」
 ショーンが首をかしげる。
「そ、それは……」
 と、レンが考え込んだその時。
「ねえねえ! 少年、こっち!」
 広場の南を流れる大レーヌ川の水面から半分だけ体を出して、こちらに向かって手を振っている女の子がいることにレンは気がついた。『三本足のアライグマ』亭に居候している、人魚のアーリンである。アーリンは海にすむ人魚なので川が苦手なので、浮き輪を使って水に浮いていた。
「聞いてよ、レン! なんかさ、川の底にすっごい大きな魚がいるんだよね!」
 レンが岸のそばに行くと、アーリンは尾っぽでバシャンと水しぶきを上げた。
「大きな魚?」
と、聞き返すレン。
「感じの悪いやつでさ。今は寝てるみたい。ニクスの話だと、海から来た危険な魚なんだって」
 ニクスというのは、川の中の世界を収める水の精の女王。彼女もレンやトリシアの友人である。
「みんな、危ないからって上流の方に避難してるんだよ。ほんっっっと迷惑!」
 アーリンは鼻の頭にしわを寄せた。
「……僕らで追い払おうか?」
 レンはちょっと考えてから、アーリンに言った。
「やった!」
 アーリンは顔を輝かせる。
「実はさ、そうしてくれないかって、思って相談したんだよね。あたしたちじゃどうにも出来なくって」
「追い払うって……騎士団に知らせなくていいのか?」
 ショーンが顔をしかめてレンにたずねた。
「それは最後。僕らが役に立つってところをトリ……じゃなかった、街のみんなに見せるんだよ。アンアリック・フォ・フヴィン!」
 レンは呪文を唱え、自分とアーリンが水の中でも息が出来るようにすると川に飛び込んだ。
「それでいいのか?」
「僕、この呪文覚えたばっかりだよ!」
 ショーンとセドリックも続いて同じ呪文を唱え、大レーヌの流れに入っていった。