WEB限定 書き下ろし小説

騎士の資格

第二回

「反省してるし、もう二度とこんなことはしないんでしょ? だったらいいよ」
 エティエンヌはほほ笑んだ。
「ほ、本当か?」
 と、イーライ。
「お金も取り戻したもん」
 エティエンヌは金貨の袋を拾い上げる。
「ありがてえ! 今度からあんたのこと、兄貴と呼ばせてくれ!」
 イーライはエティエンヌの上着のすそをつかみ、なみだ目で声を震わせた。
「……やだよ」
 それだけはお断りだった。
「逃げた方がいいんじゃない? そろそろ、騎士団が動き出すと思うんだ」
 もう真夜中。
 エティエンヌはフクロウが鳴き始めたのに気がつき、イーライたちに言った。
「そ、そうか! それじゃな!」
「またな!」
「ばいばいなんだな」
 イーライたちは手を振ると、小走りで闇の中に消えていった。
「あとはこのお金を返してっと」
 先ほどの家に足を向けながら、エティエンヌはふと思いつく。
「……そうだ! トリシアにあの女の子の手術を頼んでみようかな? 腕はいいし、もしかすると、ただでやってくれるかも知れないもんね」
 トリシアも、妙な期待をされたものである。

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