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激突!魔法運動会!

3

「じゃあ、説明するよ」
 アンリは笑顔で手をパンと叩き、生徒たちに自分の方を向かせる。
「まず、みんなを十五人ずつ、二つのチームに分ける。そうだな……アムのチームと、シャーミアンのチームってことで」
「チームに分かれるということは、勝負だな?」
 シャーミアンが、アムレディアに向けた瞳に闘志を燃やす。
「面白いわね。負けないわ」
 アムレディアも返した。
「ううう……嫌な予感」
 と、震え上がったのはレンである。
「じゃあ、まず適当に分かれて」
 アンリはみんなをうながしたが、生徒たちは顔を見合わせるだけで、なかなか二つのチームに分かれようとはしない。
「……ショーン殿」
 シャーミアンが咳払いして、ショーンに声をかける。
「君はもちろん、私に味方してくれるんだろうな?」
「……ええっと?」
「味方……」
「……う、うむ」
 潤んだ目でじっと見つめられたショーンは、仕方なくうなずいてシャーミアンの隣に立つ。
 すると。
「じゃあ、あたしはこっち」
「……私も……」
「私も!」
「僕も」
「なら、僕も!」
「俺もー」
 残りの生徒全員が、アムレディアのまわりに集まった。
「あらあら、私、人望があるのかしら、副騎士団長よりも?」
 微笑むアムレディア。
「違う! この連中、僕と一緒だと負けると思っているのだ!」
 ワナワナと震える指で、ショーンが生徒一同を指さした。
「だって、負けるのは嫌だもの」
「……ショーン……昨日……人気抜群と……自信満々に……自分で……言っていた……姿が……今となっては……妙に……悲しい……」
 追い打ちをかけたのはベルとアーエスである。
「じゃあ、僕があっちに行くよ」
 見かねたレンが、シャーミアン・チームに移動した。
 すると。
「あたしもこっちのチーム!」
 ベルがレンの隣に、磁石が鉄にくっつくようにピッタリと立った。
「そこ、近づきすぎ! ていうか、レンも少しは離れようとしなさいよね!」
 トリシアは地面をドンと踏みしめると、三人組でただひとり、アムレディア・チームに残ったアーエスの方を見る。
「……あれ? アーエスはあっちに行かないの?」
「……勝ち負け……重視……」
 アーエスは首を横に振った。
 結局、レンがいる方が有利かもしれないと思った生徒たちがシャーミアン・チームに移り、二つのチームの人数が同じになった。
 新入生のエマはシャーミアン、ミラはアムレディアのチームだ。
 もちろん……。
「お姉さまの方に入らないと、後が怖いですわ」
 キャットはトリシアと同じ、アムレディアのチームである。