WEB限定 書き下ろし小説

大激突!? トリシアVSフローラ!!

「この人はパラケルスス。偉大なる錬金術師にして医者。僕らの先生だよ」
 オーウェンがみんなに紹介する。
「お医者さん!?」
 もしかすると、自分の知らない薬や治療法を知っているかも知れないと、瞳を輝かせるトリシア。
「わしがこっちの世界で放り出されたのは」
 パラケルススはトリシアたちに説明した。
「中央広場と呼ばれている場所のど真ん中じゃった。突然、見知らぬ土地にいて、しかも、言葉は通じる。わしらの世界とは違う法則に支配された世界に迷い込んだと確信したわしは、城に向かった。城ならば、元の世界に帰る方法を知る者がおるかも知れないと思ったからじゃ」
「パラケルススが城にやってきたちょうどその時、僕らはもうひとり、この世界に迷い込んだ別の存在と会っていた」
 アンリはそう言うと、ツヴァークの方を見た。
 こちらは、トリシアたちも、フローラたちも知らない人物だ。
「わしはモルホルト教授。五百年後のアムリオンから来た発明家である」
 ツヴァークはヒゲをしごきながら、重々しげに名乗った。
「五百年後!?」
 顔を見合わせるトリシアとフローラ。
「うむ。わしはその未来から、わしの偉大なる発明、時空モグラを追って、この時代にやってきた」
「時空……モグラですかー?」
 と、スピカは首をひねる。
「お名前はー可愛いですねー」
「時空モグラ! それは別の時代、別の世界へと移動するため、時間と空間に穴を開ける機械であーる」
 モルホルト教授は説明した。
「この時空モグラを使えば、過去から未来、未来から過去、こちらの世界からあちらの世界、あちらの世界からこちらの世界へと、自由に行き来することができるのであーる」
「うう、よく意味が分かりませんわ」
 キャスリーンはこめかみに指を当てる。
「モルホルト教授の話を聞いて、わしはすぐに理解した」
 パラケルススは言った。
「わしらがこの世界に迷い込んでしまったのは、その時空モグラが、このアムリオン王国とヴェネツィアの間に穴を開けたせいだとな」
「トリシアの魔法のせいじゃなかったんだ」
「フローラの実験のせいじゃなかったんだ」
 同時につぶやくレンとオーウェン。
「あんたたちー、さっきからね!」
「失礼にも限度があるわ!」
 ドンッ!
 トリシアとフローラは、二人にひじ鉄を食らわせた。