WEB限定 書き下ろし小説

大激突!? トリシアVSフローラ!!

 翌日の午後。
 フローラ、トリシアとその仲間たちは、王都からそう遠くない山間にあるどくろ谷に来ていた。
 どくろ谷の奥にある古い遺跡が、脅迫状に書かれていた場所である。
 一行は、アンリを先頭に遺跡へと踏み込む。
 真っ暗な道を、魔旋律の明かりで照らしながら慎重に進むと、やがて扉が見えてきた。
「待った」
 アンリは扉に手をかけようとするフローラを止めた。
「こういうところには、罠がしかけてある」
 アンリがフローラを少し下がらせて魔旋律を唱えると、矢が飛んできて足元に突き刺さった。
 扉の正面に立っていたら、貫かれているところだ。
「……おお!」
「すごいね、君! 我がダンドロ家の警備担当にならないかい?」
 目を丸くするパラケルススとフランチェスコ。
「どうして分かったんです?」
 と、オーウェン。
「あはは……慣れ、かな?」
 苦笑しながら扉を開けるアンリ。
「……先生、アムレディア王女に引っぱられて、しょっちゅう、遺跡探検とかにつき合わされてるから」
 レンは同情する。
「あら、レン? 聞き捨てなりませんね。この私が無理矢理、宮廷魔法使い殿を連れ回しているとでも?」
 と、アムレディアが振り返って、目を細めたその時。
 ゴゴゴーッ! ガタガタガタ!
 地面を揺るがせて、銀色の巨大なモグラの形をした機械が、暗闇の向こうから現れた。
 モグラの頭部の上にあるハッチが開いて、姿を見せたのはツヴァークの青年である。
「よく来たな!」
 青年は金属製のモグラからひらりと飛び下りる。
「さあ、金貨をよこせ!」
「そんなもの、持って来てないわよ!」
 トリシアはベエーッと舌を出した。
「たかが金貨百万枚程度で、私に迷惑かけるなんて! 絶対に許さないから!」
 ふんっと鼻を鳴らすフローラ。
「……これだから金持ちは」
 オーウェンがつぶやく。
「こら、弟子三百二十四号!」
 モルホルト教授が前に出た。
「くっ! 教授! しつこく僕を追ってきたな!」
 青年ツヴァークはものすごく嫌そうな顔をした。
「大人しく、わしの大発明を返すのであーる! そうすれば、またうちの研究所で働かせてやらないこともないのであーる!」
「絶っっっ対に嫌だー!」
 弟子三百二十四号は、ブルブルと頭を振る。
「三百二十四って、あなたにはそんなに弟子がいるの?」
 眉をひそめて教授にたずねるベル。
「弟子はいつもひとりであーる! ただ、何故か弟子どもは長続きせず、一か月ぐらいでみんな逃げ出すのであーる!」
「人望のなさ……ショーン並み……」
「何おう!」
 アーエスのつぶやきに、ショーンが抗議の声を上げる。