WEB限定 書き下ろし小説

大激突!? トリシアVSフローラ!!

9

「うむむーっ! よくも僕の大嫌いな教授を連れてきたな、この悪人ども!」
 弟子三百二十四号はトリシアたちをにらむ。
「ひとのもの盗んで脅迫状出すやつに、悪党って呼ばれるいわれはないわよ!」
 トリシアはにらみ返す。
「……相当、それに近いことやってるけどね」
「レン! 少し黙ってて!」
「ええい、こうなったら貴様ら全員、人質だ! 行け、我が部下たちよ!」
 弟子三百二十四号が手を振ると、ガタガタという音とともに背後に、等身大の金属製の人形が四、五十体ほど姿を現わした。
 人形たちは剣を構え、足並みをそろえてトリシアやフローラたちに向かって歩き出す。
「うぬぬぬ! あれはオートマトン! あいつめ、わしの偉大なる発明を他にも盗んでおったのか!」
「おーとまとん、ですかー?」
 よく見ようとメガネを押し上げるスピカ。
「滑車と歯車で動く、鋼鉄の兵士! 剣も矢もはね返す、無敵の軍隊であーる!」
 モルホルト教授は解説する。
「面白い! ヴェネツィアの名家の者が、そんなガラクタを恐れるものか!」
 フランチェスコは胸を張って言い放つと、ススーッと後退りした。
「オーウェン君、あとは任せたぞ!」
「……なんとなく、そういう話になる気はしてたけどさ」
 うんざりした顔で剣を構えるオーウェン。
「君たちは下がって」
 アンリは三人組にそう告げると、レン、アムレディア、それにセルマと肩を並べて前に出る。
「わ、わしは自主的に下がるとするぞ」
「オーッホッホッホ! ……右に同じく、ですわ」
 そう宣言したのは、肩にアクアを乗せたパラケルススとキャスリーンだ。 
 だが。
「何がオートマトンよ! これでも食らいなさい!」
 飛び出したフローラが鋼鉄の戦士に向かって、フラスコを投げつけた。
 どっごーん!
 数体のオートマトンが、爆発に巻き込まれてふっ飛ぶ。
「え? 攻撃魔法?」
 目を丸くするレン。
「……フローラは薬品を作ろうとしては爆発を起こし、バラの香油を作ろうとしては爆発を起こし、金を作ろうとしては爆発を起こす。ある意味、魔法かもね」
 額に手を当てて、オーウェンが説明する。
「負けていられないわ! バラク・ティール!」
 トリシアも、例によってどこに飛んでいくか分からない攻撃魔法を放つ。
 ごっがーん!
 残りのオートマトンたちも、あっさりとふっ飛んで粉々になった。
「……次は」
「あいつね」
 トリシアとフローラはキラリと目を怪しく輝かせ、弟子三百二十四号を見る。
 フローラの手には、モクモクと虹色の煙を上げる薬品が入ったフラスコ。
 トリシアの手は魔旋律を帯びて、赤く光る。
「わーっ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさーい!」
 本気で身の危険を感じた弟子三百二十四号は、あっさりと降伏した。
「こわいよー! あの子たち、こわいよー!」
 泣きながらレンとオーウェンにしがみつく弟子三百二十四号。
「さあ、おとなしく時空貫通車を返すんだ。でないと、トリシアとフローラを野放しにするぞ」
「返す! 返しますから! その二人を近寄らせないでー!」
 弟子三百二十四号は悲鳴を上げた。