WEB限定 書き下ろし小説

トリシアと王都観光ツアー

     ツアー解散

 翌朝。
 みんなの見送りに城門に集まったのは、トリシアとレンだけではありませんでした。
 後輩三人組にサクノス家の三兄弟、シャーミアンにアンガラド、フィリイ、アンリとアムレディア王女、セルマにフェリノール、それにもちろん、キャット。
 ついでに、おしゃべりフクロウ一味まで。
 一同は門の前に立ち、ツアーのみんなをこちらの世界へと送り出します。
「そこの光の輪をくぐると、元いた世界に戻れるよ。名残り惜しいけど、またいつでもこっちに世界には来られるから」
 トリシアはそう言って手を振りました。
「いつでもおいで」
「歓迎よ」
 と、アンリとアムレディア。
「お次はなんの料理でもてなそうかねえ?」
「次回はファヴローウェインの森もコースに入れておくぞ」
 と、セルマとフェリノール。
「血ー、血ー。今度来た時にはーぜひー」
「私もー血ー」
 と、アンガラドとフィリイ。
「よさんか、見苦しい」
 隣のシャーミアンが額に手を当てます。
「こっちに寄ることがあったら、騎士団本部を訪ねてくれ」
「面倒さえ起こさなければ、だがな」
「もー、リュシアンはすぐそうやって照れるー」
 サクノス家の三兄弟は手を差し伸べました。
「次のツアーの案内役は、あたしとレン先輩だからね!」
「……それは……ない……」
「この僕ひとりで十分だ」
 と、後輩三人組。
「ほんとにノートは要りませんか?」
「あたしのサインつけてもいいんだけど?」
「俺だってそんなの要らねえって」
 マイルズ、おしゃべりフクロウ、ヴォッグは、ひじでお互いを小突きあっています。
「名残惜しいですわね」
 キャットはほんの少し、涙ぐみます。
「僕ら、きっといつでも会えるよ。心がつながっているから」
 レンはみんなを見渡し、うなずきました。
「じゃあ、光の中に!」
 トリシアはみんなを光の中、こちらの世界へと進ませます。
「元気でね! また会おう! 絶対だからね!」
 トリシアの声は、だんだんこだまのように遠くなり……。

 みんなの上には、僕たちの世界の青い空が広がっていました。

                                   (おしまい)
………にぎやかアムリオンツアーは、いかがでしたか?
また何度でも、行ってみたいですね!!